住宅の豆知識

住まいを環境に優しい省エネ設計「パッシブハウス」にリフォーム

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近年 日本を含む世界中の国や地域にて気候変動による豪雨・洪水・高潮・干ばつといった異常気象や自然災害が頻発しています。

気候変動とは、二酸化炭素やメタンといった温室効果ガスの排出量増加により空気中に含まれる温室効果ガスの濃度が高くなることで 地球全体の平均気温が上昇し 気候メカニズムに大きな影響を与える現象です。

日本では 2015年9月に国連サミットにて全会一致で採択された「SDGs (持続可能な開発目標)」、同年12月に開催された気候変動枠組条約締結国会議にて採択された「パリ協定」を受け、行政・民間・国民が一体となって気候変動への対策に取り組むことを目指す 気候変動適応法の施行や温室効果ガス削減施策などを実施しています。

しかし、環境省と国立環境研究所がとりまとめた「2019年 (令和元年) の温室効果ガス排出量・速報値」によると、家庭から排出された温室効果ガスの排出量は 電力の低炭素化や再生可能エネルギーの導入拡大などに伴い 前年度と比べると やや減少したものの いまだに高い数値となっています。

ここでは 2050年カーボンニュートラルを目指す さいたま市が推進する「ゼロカーボン推進」への取り組みをきっかけに注目されているヒトと地球環境に優しい省エネ設計「パッシブハウス」についてご説明します。

パッシブハウスとは

パッシブハウスとは、自然エネルギーを家庭で使用するエネルギーとして最大限に活用することで 住み心地の良い快適な住環境をつくりだすことを目指した 究極の省エネ住宅を実現するための建築・設計メゾットになります。

1988年 スウェーデン屈指の名門校のひとつ ルンド大学のアダムソン教授とドイツの物理学者 ウォルフガング・ファイスト博士のあいだで交わされた対話をきっかけに ヒトと地球環境に優しい家づくりに関する研究がはじまりました。

その後 度重なる研究により ついに世界初のパッシブハウス住宅が完成し、1991年には 世界でもっとも厳しいとされる省エネ・エコ住宅における住宅性能基準を確立しました。

ファイスト博士は この成果と知識をもとに1996年「パッシブハウス研究所」を設立し、いまでは環境先進国・ドイツの標準的な住宅性能基準となっています。

日本では あまり馴染みのない言葉である「パッシブハウス」ですが、じつは2010年2月に設立された 一般社団法人 パッシブハウス・ジャパンなどを中心に 最先端の省エネ・エコ住宅に関する情報提供などが積極的に行われています。

さいたま市では SDGsへの関心・興味の高まりとともに 新築・注文住宅だけではなく 既存住宅をパッシブハウスへとリフォーム・リノベーションできないものかと気になっているご家族が増えています。

パッシブハウスの認定基準

「パッシブハウス」と呼ぶことができる省エネ・エコ住宅は、パッシブハウス研究所によって定められたエネルギー消費基準を満たし 認定を受けている建築のみとなります。

お住いの住宅が「パッシブハウス」として認定を受けるには、

  • 冷暖房負荷が各15kwh/m2以下
  • 家電を含む 一次エネルギー消費量が 年間120kwh/m2以下
  • 気密性能として 50Paの加圧時における漏気回数0.6回以下

※ 漏気回数0.6以下 = 隙間相当面積(C値) が0.2cm2/m2以下

これら3つの基準をすべて満たしていることが条件となります。

パッシブハウスの認定基準である3つの条件のうち 「冷暖房負荷を各15kwh/m2以下」を達成するには【省エネ基準を満たした冷暖房器具+高性能な日射・遮蔽性能+外皮平均熱貫流率 (UA値) 0.4以下】を実現することで 問題なく条件を満たすことができるため 比較的 難しいことではありません。

しかし、お住いの環境によってはUA値が0.25以下の高性能な住宅であっても なかなかパッシブハウスの条件を満たすことができないことがあります。

その場合には 日射・遮熱性能を向上させることで冷暖房エネルギーの削減をすることで条件を満たすことが可能となります。

パッシブハウスの認定基準である3つすべての条件を満たすためには、住宅全体の性能を見直すだけではなく お住いの地域の気候や既存住宅の周辺環境などを含めたリフォーム・リノベーションを行うことがポイントです。

日本で主流の最新省エネ住宅とパッシブハウスの違い

現在 さいたま市では、行政・民間・市民が一体となり2050年の二酸化炭素排出量 実質ゼロを目指す「ゼロカーボン推進 (地球温暖化対策)」に取り組んでいます。

その一環として 一定の省エネ・エコ性能を要件とする住宅リフォーム・リノベーションを対象に補助・助成金制度を実施しています。

しかし、ひとくちに省エネ・エコ住宅といっても パッシブハウス、ZEH、スマートハウスなど さまざまな種類があり、それぞれの省エネ・エコ住宅ごとに省エネ基準が異なるほか 利用可能な補助・助成金制度にも違いがあります。

パッシブハウス

新築、住宅リフォーム・リノベーション問わず、環境先進国・ドイツにて確立された世界最高水準の省エネ住宅基準であるパッシブハウスとして認定を得るためには、

  • 1年間の冷暖房負荷を各15kwh/m2以下にする
  • 家電を含む 一次エネルギー消費量を120kwh/m2以下に抑える
  • 気密性能として50Paの加圧時における漏気回数を0.6回以下にする

この3つの要件をすべて満たしていることが必須となります。

しかし、パッシブハウスとしての認定を得るためには これら3つの省エネ基準とは別に一般社団法人 パッシブハウス・ジャパンに加盟している 省エネ建築診断士による設計監理がなされていることも条件のひとつとして含まれています。

なお、日本におけるパッシブハウスの認知・普及率は ZEHやスマートハウスと比べ 低いこともあり、パッシブハウスを対象とするリフォーム補助・助成金制度がありません。

しかしながら、自然エネルギー以外のエネルギーを極力使用せず 住まいの快適性と住み心地の良さを実現できる究極の省エネ・エコ住宅であることから 経済産業省・国土交通省連携事業「既存住宅における断熱リフォーム・ZEH化支援事業」、2015年より始まった「地域型住宅グリーン化事業」による補助・助成金制度が利用可能となっています。

ZEH (ネット・ゼロ・エネルギー)

経済産業省・国土交通省・環境省が連携し推進しているZEH (Net Zero Energy House ) とは、省エネ×断熱×創エネが可能な住宅になります。

冷暖房・冷蔵庫・給湯・照明などで使用されるエネルギー消費量を抑えつつ、太陽光発電システムの導入・設置により 新たなエネルギーを自宅で創りだすことができることを目指しており、 快適な日常生活を過ごすうえで必要となるエネルギーを自給自足できる住まいとして ヒトと地球環境に優しいエコな住宅です。

ZEHとしての認定を受けるためには、

  • 屋根・外壁・窓など外皮の断熱性能を大幅に向上させる
  • 高効率な省エネ設備の導入による室内環境の快適性を維持
  • 再生可能エネルギーシステムの導入による大幅な省エネルギーの実現
  • 一次エネルギーの年間消費量収支ゼロを目指す

この4つの要件を満たす必要があります。

なお、経済産業省と国土交通省は 既存住宅のZEH化を支援すべく 戸建て住宅・既存住宅の高断熱化による省エネ・省CO2化のリフォーム・リノベーション工事の支援事業を実施しています。

ZEH+ (ゼッチプラス)

2018年より新たな省エネ・エコ住宅基準として「ZEH+ (ゼッチプラス)」が定義されました。

通常のZEHと比べ より高性能な省エネ・エコ住宅設備の導入・設置が求められるため、更なる省エネルギーの実現が可能となります。

ZEH+として認定を受けるには、

  • 通常のZEH基準をすべて満たしている
  • 省エネ基準で定められた一次エネルギー消費量を25%以上削減
  • 太陽光発電システムによる自家消費拡大措置のうち2つ以上の導入が必須

これら3つの要件をすべて満たしている必要があります。

外皮性能の更なる向上 外皮平均熱貫流率(UA値)が0.3~0.5以下。
※地域区分によって求められるUA値が異なります。
※さいたま市のUA値は0.56~0.6以下
高度なエネルギーマネジメント HEMSによる住宅設備のエネルギー消費量の制御を行う。
プラグインハイブリッド車を含む
電気自動車を活用するための充電設備
発電したエネルギーを電気自動車などに充電できる設備を車庫や庭などに設置する。

通常のZEHと比べ 求められる住宅設備の導入・設置には高額な費用がかかるため、国や自治体による補助・助成金の給付額も高めに設定されています。

なお、通常のZEHとZEH+では 補助・助成金制度の交付条件が異なりますので ZEH+への住宅リフォーム・リノベーションをお考えの際は、事前に交付条件を確認しておきましょう。

スマートハウス

IT (情報技術) を採用することで 電気・ガスを使用する住宅設備や家電製品などを制御し、家庭における一次エネルギー消費量を抑えることができる省エネ住宅になります。

スマートハウスでは、主に 太陽光発電システムやエネファームといった家庭用燃料電池の導入・設置を「HEMS」によって制御することで 自宅で使用するエネルギーの自給、日常生活で消費できず余ってしまったエネルギーを電力会社に売って売電収入を得る、つくったエネルギーを災害時・停電時に備えて蓄電池に貯める といったさまざまなメリットを得ることができる省エネ住宅になります。

HEMS (Home Energy Management) とは、電気・ガスといったエネルギーの使用量を見える化するエネルギーの管理システムであり、すべての住宅設備や家電製品を自動的にコントロールすることで 家庭でのエネルギー消費量を つねに適切な状態に制御・管理することができるようになります。

スマートハウスへの住宅リフォーム・リノベーションをお考えならば、

  • 蓄電池または電気自動車などの充給電設備の設置
  • ソーラーパネルなど太陽光発電システムおよびHEMS一式の導入

この2つの要件を満たす必要があります。

なお、国や自治体で実施されている補助・助成金制度のなかには併用可能なものもあります。

スマートハウスへのリフォーム・リノベーションをお考えであるならば、住宅の断熱性能や省エネ性能など住宅性能を向上させられるリフォーム・リノベーションも併せて実施すると良いでしょう。

パッシブハウスへの住宅リフォーム・リノベーションプラン

パッシブハウスが世界でもっとも厳しい省エネ・エコ基準とされる理由は、これまでの住宅リフォーム・リノベーション設計では考えもしなかった細やかな箇所や目に見えない場所まで しっかりと手を加えてカバーしなければ 本当の意味で省エネ・エコ対策とは言えないという考えにあります。

既存住宅をパッシブハウスへとリフォーム・リノベーションを行う場合、集熱・蓄熱・熱移動・採涼・排熱・通風・日射取得・日射遮蔽・気密断熱 これら8つの要素を住宅の構造や建材などに取り入れることで 空気や熱の流れをコントロールし 住み心地の良い快適な室内環境の実現を目指します。

室内環境の空気を効率よく入れ替えたい

住宅内にこもりやすい湿気や新型コロナウイルスの感染対策の一環として 室内の空気を効率よく入れ替えたいとお考えならば、住宅の内側と外側で異なる空気の温度差や風圧の差を利用することでスムーズな換気を実現する「パッシブ換気」へのリフォーム・リノベーションがおすすめです。

パッシブ換気とは、住宅の下に設置された窓から屋外の新鮮な空気を取り込み 天井や屋根裏に溜まった温かな空気を高窓から逃がすことで エネルギーを使用することなく 効率的に住宅全体の空気を入れ替ることができる換気システムになります。

窓を対角線上に設置し 高低差をつけることで 複雑な住宅内の空気の流れをコントロールすることで 外から入り込む自然の風だけで住宅全体を快適に過ごせる空間となります。

主寝室や子ども部屋といった個室の換気には、各部屋を繋ぐ廊下の上部分に高窓もしくは腰高窓を設置し 部屋のドアには通気用のスリットが入っているものを選ぶことで ご家族のプライバシーを守りながら 空気の入れ替えを行うことも可能です。

1年を通して快適な室内環境を実現したい

夏は蒸し暑く 冬は冷え込みの厳しい住宅を エネルギー効率の高いパッシブハウスにリフォーム・リノベーションする場合には、住宅内に入り込む太陽光をコントロールすることがポイントです。

赤道から北緯35度の位置にある日本では 夏になると日射を受ける時間が長くなるため気温が高く、冬は日射を受ける時間が短いため気温が低くなります。

1年を通して住み心地の良い快適な室内環境を実現するには 夏場の日射を防ぎ 冬場の日射のみを室内に取り込むことができるように工夫することが大切です。

夏の日射は高度が高く 冬の日射は高度が低いため 屋根に軒や庇を取り付けることで 住宅内に入り込む日射を調節することが可能となります。

しかし、敷地・窓の向き 隣家の建ち方などによって 住宅ごとに軒や庇の長さや材質など求められる条件が大きく異なります。

夏はしっかりと日射が遮断でき 冬は可能な限り日射が取り込めるよう リフォーム業者としっかり話し合いましょう。

屋根に軒や庇を取り付けてしまうと 部屋の奥まで日射を取り込むことができず つねに部屋が暗く ひんやりと寒さを感じる場合には、室内に入り込む日射を自由に調節できるオーニングやシェードを設置すると良いでしょう。

世界最高水準の省エネ住宅「パッシブハウス」にリフォームしませんか。

太陽光発電システムなど再生可能エネルギーを積極的に取り入れ 実際に使用したエネルギーと相殺させることを目的とするZEHやエネルギーの見える化により家庭で使用されるエネルギー消費量の削減を目指すスマートハウスとは違い、パッシブハウスは 自然エネルギー以外のエネルギーを極力使用せず快適な室内空間を実現する省エネ住宅になります。

そのため、自然エネルギーを効率良く得られる環境条件の良い土地選びや高性能な省エネ性能がゆえにリフォーム費用が 一般的な省エネ・エコリフォームと比べると やや割高となります。

四季彩ホームでは、パッシブハウスへのリフォームに関するお悩みやご相談を承っております。

ぜひお気軽にご相談ください。

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