住宅の豆知識

子どものためのバリアフリー住宅づくりとは?

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2004年より「バリアフリー化推進要綱」が策定されたことで、さいたま市では公共交通機関や歩行空間、住宅づくりを中心に積極的なバリアフリー化を行ってきました。

しかし、さいたま市内のバリアフリー化の多くが妊婦や高齢者など大人の視点でデザインされたものであり、障がいを持つ子どもに配慮したデザインはほんの一部に限られています。

そのため、障がいを持つ子どもの親御さんのなかには、公共交通機関や障がい者専用駐車場を利用したときや子ども向けのバリアフリー住宅の新築・リフォーム工事を依頼したとき、子ども視点のバリアフリーの存在を知らない住民から心無い言葉を浴びせられるなどの辛い経験をされたご家族もたくさんいます。

バリアフリーの定義は、老若男女問わず全ての住民が安心・安全な日常生活を過ごせるように「あらゆる障壁を取り除くこと」です。

そこで今回は、大人ではなく「子ども」にスポットライトを当て、子どものためのバリアフリー住宅づくりのポイントをご紹介します。



車いすを利用する子どものためのバリアフリー住宅づくり

ケガや病気により車いす生活を送る子どもが安心・安全に暮らせるバリアフリー住宅へとリフォームする場合、どのような点に気を付けたらよいのでしょうか。

2006年12月20日に施行された「バリアフリー法 (高齢者、障がい者等の移動等の円滑化の推進に関する法律)」によると、『児童・乳幼児は成人と大きな体格差があることから、安全性の確保が重要となる』とあります。

とくに、子どもと大人では目線位置からの視認性や操作性などに大きな違いがありますので、車いす生活を送る子どもの意見を参考に将来を見据えたバリアフリー化を進めていくことがポイントです。



部屋の開口部や通路スペースを広めに確保する

車いす生活を送る子どもにとって、部屋を移動するときはとても緊張します。

その理由は、部屋の開口部や部屋同士を繋ぐ通路スペースが狭く、ドアや壁に車いすがぶつかってしまいスムーズに移動することができないからです。

一般的な車いす利用者の最小動作空間は車いすの全幅によって異なりますが、最低でも部屋の開口部幅800mm、通路スペース90cm設ける必要があります。

しかし、標準的な部屋の開口部幅は平均736mmほど、通路スペースは約78cmほどですので、車いす利用者にとっては移動しにくい住み心地の悪い家となります。

車いす生活を送る子どもが部屋や通路をスムーズに移動できる住宅のバリアフリー化を行うのであれば、部屋の開口部幅850mm~1000mm、通路スペース120cm以上を目安にリフォーム工事を行うと良いでしょう。



車いすの走行を妨げる段差を最小限に抑える

土間と廊下を繋ぐ上り框 (かまち)、部屋の開口部や部屋同士のあいだに置かれた敷居などの段差があると、車いすの走行を妨げるだけではなく、つまづいて転倒してしまいケガや事故を招く原因となります。

とくに浴室から脱衣所への水漏れを防ぐため、高さ10cmほどの段差がある住宅も少なくありません。

車いす生活の子どもが各部屋を気軽に立ち寄れる空間にするには、家全体の段差を2mm以下に抑えると良いでしょう。

ですが、どうしても上がり框を設置したい、浴室からの水漏れ対策として段差を設けたいとお考えの親御さんもたくさんいます。

その場合、上がり框の高さに合わせてスロープと手すりを設置する、浴室に新たな排水機能を設置して脱衣所への水漏れを防ぐなどバリアフリー化をサポートするリフォームアイディアがいくつかございます。

段差の解消法は必ずしもフラットにするだけではないということも併せて覚えておきましょう。



子どもが使いやすい手すりを設置

車いす生活を送る子どもが1人でトイレなどを利用できるよう、手すりの設置をご検討されている親御さんもたくさんいます。

しかし、手すりのデザインや設置場所によってはとても使い勝手の悪い手すりになってしまう可能性があるため、子どもの目線になって手すりのデザインや設置場所を決めることが大切です。

子どもが利用しやすい手すりの高さは平均60cm~65cmとなります。

高齢者や妊婦など大人が利用しやすい手すりの高さが平均75cm~80cmほどですので、それよりも10cmほど低い位置に手すりを取り付けることになります。

ですが、子どもの成長は早いため壁や床に取り付けるタイプの手すりを設置してしまうと、成長に合わせて手すりの位置を定期的に変えるリフォームを行う必要があるのではないかと心配になってしまう親御さんもたくさんいます。

現在では子供の成長や使用者に合わせて高さ調節が可能な手すりや必要に応じて手すりを出したりしまったりできる可動式タイプの手すりなどもございます。

また、身体を支えやすい平型デザインの手すりや握ったときのグリップ力を増してくれるディンブル加工デザイン、抗ウイルス対策が施されたデザインなど、さまざまなデザインの手すりがございますので、手すりの設置場所や使用目的などに応じて手すりのデザインも決めていくと良いでしょう。

発達が気になる子どものためのバリアフリー住宅づくり

発達が気になる子どもの親御さんにとって、落ち着いて暮らせる安心・安全な住まいを探すのはとても大変なことです。

とくにこだわりの強い子どもや多動傾向にある子どもの場合、一般的な住宅やマンションでは心を落ち着かせて過ごすことが難しいとされています。

ですが、子どもの特性に合わせたバリアフリーリフォームを行うことでご家族全員が安心して過ごせる家づくりが可能となります。



目的に合わせて空間を明確に区切る

「1部屋=1目的」として認識している子どもの場合、さまざまな用途や目的で使用される部屋にいると不安に感じてしまうことがあります。

とくに、「リビング+キッチン」や「ダイニング+キッチン+リビング」など1つの部屋で多様な行動をとることができる部屋は要注意です。

どうしても1つの部屋で多様な行動をとりたい場合、「リビング=テレビを見る場所」や「ダイニング=食事をする場所」など目的ごとに室内空間を明確に区切ることがポイントです。

たとえばリビングダイニングの場合、リビングとダイニングの境目にスライドドアを設置することでの空間をキッカリ分けることができます。

スライドドアを設置する際は、床との段差を作らないことがポイントです。

段差をフラットにすることで、学校などで子どもが家にいない時間帯にドアを開放して空気を循環させたり、掃除をスムーズに済ませたりすることができます。

また、段差が無いことで子どもが走って段差につまづいて転んでしまうといった住宅トラブルも防ぐことができます。



心安らぐ静かな空間づくりを心掛ける

発達が気になる子どものなかには、音や光に敏感に反応してしまうことがあります。

生活音や屋外の音に敏感に反応してしまうのであれば、省エネ住宅でも採用されている防音・遮音性に優れた窓ガラス・窓サッシリフォームがおすすめです。

既存の窓ガラスに厚さ5mm以上のガラスを設置する内窓リフォームを行うことで防音・遮音性が高まると同時に気密性も向上させることができます。

ただし、屋外から入り込む音の多くがサッシの隙間から入り込むため、既存の窓の内側に樹脂製のサッシレール枠を取り付ける内窓・二重サッシリフォームを行うと良いでしょう。

窓から入る日差しや照明器具の明かりなど「光」に対して敏感に反応してしまう場合、遮光タイプの窓ガラスや遮光フィルムなどで室内に入り込む日差しを抑えると良いでしょう。

照明の明かりが気になってしまうときは、暖色系の温かな光を放つLED電球に変更しましょう。

現在ではLED減給のバリエーションも増えており、子どもの好みに合わせて光の強さや色味を選ぶことが可能となり、子どもの特性に合わせた空間づくりが可能となりました。



部屋のドアや窓に「カギ」を取り付ける

じっとしていることが苦手な多動傾向のある子どもを持つ親御さんは、つねに子どもが危険な行動をとらないかハラハラドキドキしっぱなしで気を休めることがなかなかできません。

とくに2階建て住宅や2階以上のマンションなどにお住いの親御さんは、子どもがドアや窓を遊び道具にしてケガや事故を起こしてしまうのではないかと不安なことでしょう。

多動傾向の子どもがドアや窓で遊ぶのを防ぐには、カギを取り付けるのがおすすめです。

いまでは認知症の深夜徘徊防止策としてドアや窓にカギを取り付けるリフォームが定番となっていますが、多動傾向のある子どもの安全性を確保することにも有効であることが分かってきました。

家のなかにある全てのドアの両側にカギを取り付けることで部屋の内側と外側からドアの施錠が可能となり、ドアによるケガや事故を防ぐことができます。

ただし、使用したカギは必ず子どもの手の届かない場所に保管する用にしましょう。

子どもの手の届く範囲にカギを保管してしまうと、勝手にカギを開けたり、カギを遊び道具に使ったりしてしまう可能性があります。

窓を遊び道具にすることの多い子どもの場合、転落防止対策として窓の内側に手すりを設置する親御さんも多いですが、今度は手すりを遊び道具にしてしまう可能性が高くなり、さらにケガや事故のリスクが高くなってしまいます。

そこで、子どもが1人では窓を開けられないように滑り出し窓にプラスして補助カギを設置することで窓からの転落リスクを最小限に抑えることができます。



子ども向けバリアフリー住宅リフォームで利用できる助成金や減税制度

現在、日本全国で高齢者・障がい者が安心・安全に暮らせる社会を目指し公共交通設備や建築物等のバリアフリー化が積極的に行われています。

しかし、2013年に国土交通省が行った調査によると、一般家庭における一定のバリアフリー化率は41%ほどと低く、高度なバリアフリー化率に至っては11%ほどに留まっています。

さらに、この数値はあくまで高齢者・障がい者などの「大人」の目線で行われたバリアフリー化率を示すものであり、障がいを持つ子ども向けのバリアフリー化率はさらに低くなっています。

さいたま市では、障がいを持つ子どもが安心・安全に暮らせる家づくりをご検討中の親御さんを対象に「重度身体障がい者(児)居宅改善整備費の補助」の申請を受け付けています。

この制度はさいたま市内に在住の身体商売者手帳をお持ちの肢体不自由者(児)が安心・安全な生活を送れるよう住宅の一部をリフォームする際に必要となる経費を補助するものです。

日常生活用具等の給付対象となる改修等については対象外となりますが、申請を行うことで改修費用の2/3 (限度額30万円)を受け取ることができます。

ただし、発達が気になる子ども向けのバリアフリー化においては現時点で補助・助成制度がございませんので、基本的には実費となってしまいます。

ですが、リフォーム工事の内容によっては将来を見据えた住宅のバリアフリー化または省エネ化対象リフォームとして認められるケースがあります。

また、条件に合ったバリアフリーリフォームを行った場合、リフォーム減税制度を利用することが可能となります。



障がいの有無を問わず家族全員が笑顔で暮らせる家づくりを目指しましょう。

ここ数年、日本各地で少子化対策として子育て世帯における育児環境の整備や育児バリアフリーが本格的に進められています。

しかし、障がいを持つ子どもに対する支援に対しては未だ認知度が低く、法規則が不十分となっています。

四季彩ホームでは、障がいの有無を問わずご家族全員が笑顔溢れる安心・安全な家づくりのサポートを行っています。ぜひこの機会にお気軽にご相談ください。