住宅の豆知識
お家のメンテナンス等に欠かせない足場の必要性と仮設費用相場
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屋根・外壁塗装工事の見積もりを出してもらった際、ふと「足場仮設代」という項目に目が留まる施主様も多いのではありませんか。
足場仮設代とは、屋根・外壁塗装や建築工事等において職人さんが安心・安全に高所作業に取り組むための足掛かりを目的とする仮設の構築物を組み立てる際に必要となる費用です。
世界文化遺産に登録されているエジプトのピラミッドや中国の万里の長城を建てる際にも足場の仮設が行われていたと言われており、日本でも奈良時代の遺構から足場穴の跡が見つかっているほど、当時から建築時に欠かせない重要な存在だったことが分かります。
しかし、屋根・外壁塗装の職人ではない施主様ご家族にとって、なぜ足場仮設が必要なのか、足場 1m2 あたりの単価相場はいくらなのかと分からないことが多すぎて、見積もりにある金額が本当に適正な価格かどうかを判別することができず、つい契約書にサインをしてしまうケースも少なくありません。
そこで今回は、屋根・外壁といったお家の外装の点検やメンテナンス等を行う際に欠かせない足場の必要性と仮設費用相場についてご説明します。
屋根・外壁塗装工事における足場の必要性

足場は一時使用であることが多いにも関わらず、屋根・外壁塗装工事費用の約 20%を占めるほど高額のため少しでも足場仮設代を安くしたいと考える施主様ご家族も少なくありません。
では、なぜ屋根・外壁塗装工事などを行う場合、足場の仮設が必要になるのでしょうか。
① 作業中の安全性を確保する
足場を仮設する最大の目的は、屋根・外壁塗装工事など高所での作業を行う職人さんの安全を守るためです。
建築・土木などの作業において、何よりも大切なことは作業にあたる職人さんたちの安全を第一に考えなければなりません。
労働安全衛生法とは?
1972 年に労働基準法第 5 章に代わり制定された法律です。
建築・土木などの作業を行う労働者の安全面と健康面の両方を守るため、労働災害防止に関する事業主の義務と管理体制を明確にしています。
施主様より屋根・外壁塗装工事を依頼された場合、
- 高さ 2m 以上の高所にて作業を行う場合、転落・墜落等の労働災害を防ぐため作業床を設置する
- 作業床の端、開口部など転落・滑落の危険性がある箇所には囲い、手すり、多いなどを設ける
- 作業床を設置することが難しい場合、労働者に安全帯を使用し防網を張る
- 強風、大雨、大雪など天候が荒れている状態での作業は禁止
など、法律で定められた要項を事業者はきちんと守る必要があります。
衛生法により、2m 以上の高所にて作業を行う場合は足場の仮設等による安全対策が義務付けられていますが、1.5m を超える高さにて作業を行う場合も職人さんの安全を守るために足場を組み立てる場合があります。
② 屋根・外壁塗装工事の品質を保つ
屋根・外壁塗装工事の仕上がりは足場が適切に設置されているかどうかで決まります。
足場の組み方が適切であれば、職人さんは万全の態勢で臨むことができるため本来の実力を発揮することができます。
しかし、どんなに腕利きの職人さんであっても足場の組立てが不適切な場合、ハケやローラー使用時に手元が狂いやすくなるため、どうしても施工ムラが発生しやすくなります。
高所での塗装作業を安定させるためにも適切な足場を組むことが大切です。
③ 近隣住民への配慮
足場を仮設せずに屋根・外壁塗装工事を進めてしまった場合、ご近所トラブルに発展する可能性があります。
とくに塗装前に行う高圧洗浄作業中や塗装中は水しぶきや塗料の飛散が起こりやすく、ご近所さんの大切なお家や洗濯物などを汚してしまう場合があります。
足場を設置する際に飛散防止のメッシュシートを取り付けることで高圧洗浄作業中の水しぶきや塗装中に起こりやすい塗料の飛散などを未然に防ぐことができます。
屋根・外壁塗装工事にて使用される足場の主な種類

屋根・外壁塗装工事を行う際に欠かせない足場には、大きく分けて 8 種類あります。
どの足場を使用すべきかはご自宅のある地域の住環境等によって異なりますので、一概にこれが良いとは言えませんが、どの足場にもメリット・デメリットがありますので、ご家族でしっかりと話し合って足場の候補をいくつか挙げておくとより正確な見積もりを出すことができます。
- くさび緊結式足場
凹凸の付いた金属製のくさびを部材同士の連結部分に打ち込み、それぞれの部材同士を 1 つ 1 つ接続していく足場になります。
足場の骨組みとなる鋼管(支柱)を一定間隔で組み上げ、緊結部分の付いた水平材や斜材などをしっかりと「くさび」で固定しながら足場を固めていくため、職人さんの安全面を守るのに優れた足場として屋根・外壁塗装工事をはじめ幅広い建築・土木工事にて使用されています。
くさび緊結式足場には、大きく分けて「キャッチャータイプ」「ビケタイプ」「三共タイプ」の 3 種類ありますが、戸建て住宅の屋根・外壁塗装工事では主に「ビケタイプ」を使用したビケ足場を使用するのが一般的となっています。
ビケ足場は、主に低中層の建築物を工事する際によく使用される足場であり、組立て・解体が比較的簡単、作業時間の短縮が図れる、人件費・輸送コストの削減が可能、強度・耐久性が高いなどのメリットがあります。
しかし、足場設置時にある程度のスペースが必要となるため、隣家との間隔が狭い場合は設置することができないため、ビケ足場の設置が可能かどうか事前の現場調査が必須となります。
- 枠組み足場
鉄製の丈夫な建て枠と踏み板を組み合わせて設置される足場です。
職人さんのあいだでは「ビティ足場」とも呼ばれており、くさび緊結式足場と共に幅広い建築・土木工事にて使用されている足場のひとつです。
ビティ足場は、1940 年代に鋼製足場を考案したアメリカのデイビッド・イー・ビティ氏に由来しています。
日本で鋼製足場が使用されるようになったのは 1950 年代からであり、組み立て・解体が比較的簡単、軽量で扱いやすい、部材の強度が高く安全面に優れている、原則地上 45m の高さまで組み立て可能など様々なメリットがあることから、いまではビルやマンション、大型商業施設といった高層建築物の工事を中心に使用されています。
もちろん戸建て住宅の屋根・外壁塗装工事の際にもビティ足場を使用することもできますが、くさび緊結式足場で使用される部材と比べてサイズが大きく搬入・搬出に手間がかかるため、足場仮設代が高額になる可能性があります。
- 単管足場
単管と呼ばれる直径 48.6mm の鉄パイプを丁寧に組み合わせて設置される足場です。
別名「鋼管足場」とも呼ばれており、鉄パイプに金具をかみ合わせてボルトでしっかりと固定することで鉄パイプ同士を接続し組み立てていきます。
2 本の支柱のあいだに踏み板を並べたものを「二側足場 (単管抱き足場)」、1 本の支柱に「ブラケット」と呼ばれる腕木を出してその上に踏み板を並べたものを「一側足場(単管ブラケット足場)」と言います。
設置スペースの小さい二側足場は、隣家との間隔が狭くても設置できる、コストパフォーマンスが良く足場仮設代を抑えることが可能、職人さんが自由に組み立てることができるため複雑な形状の建築物にも対応することができます。
しかし、二側足場は設置された 2 本の鉄パイプの上に乗って作業をしなければならないため、安全面や品質面に問題が生じやすくなります。
一方の一側足場は、単管足場の上にブラケットを使用することで職人さんの歩行スペースを確保しているため、二側足場と比べて安全性が高くなり、屋根・外壁塗装工事の仕上がりも良好です。
ただし、ブラケットを 1 つずつ取り付けていかなければならず、足場を設置する際に時間がかかってしまうデメリットがあります。
なお、現在さいたま市では単管足場を使用した屋根・外壁塗装工事を行う塗装業者は少なくなっています。
けれども、一部の塗装業者では低層の建築物の外壁塗装工事の際に単管足場を使用する場合があります。
- 吊り足場
足場を設置しない無足場工法によって組み立てられる特殊な足場です。
河川・運河などの上に架設する橋梁や規模の大きな工場施設など下から足場を組み立てることができない場合のみ使用される足場ですので、戸建て住宅で使用されることはまずありません。
作業中の転落・墜落等の労働災害リスクが非常に高いため、吊り足場を設置する際には足場の組み立て棟作業主任者を置くことが義務付けられています。
- 先行足場
建築物の新築時に使用されることの多い足場になります。
手すり先行工法とも呼ばれており、足場の組み立て・解体時に先だって手すりを設置します。
つねに手すりが設置された状態での作業となりますので、作業中の転落・墜落等の労働災害リスクが低くなります。
より安全性を考慮し、足場全層に二段手すりと幅木を設置する業者もあります。
作業をする側にとっては安心感のある働きやすい作業空間となる一方、手すりがあることで作業スペースが限定されてしまい作業効率が低下するというデメリットがあります。
また、手すりを設置するため 3 階以上の高層建築物の工事には使用することができず、建設予定地をぐるりと足場で囲ってしまうため資材の持ち込みに制限がかかってしまう場合があります。
- 移動式足場
キャスター付き枠組み足場です。
職人さんたちのあいだでは「ローリングタワー」とも呼ばれており、1 度設置・組み立てを行えば人力で簡単に移動させることができます。
また、作業床・手すりといった防護設備や脚輪・昇降用のはしごなどの部材も組み込むことも可能であり、人力で高さ調整もできるため、労働災害リスクの低下や作業の効率化などを図ることができます。
ただし、設置可能な場所が限られているため、移動式足場を希望される場合は事前に現場調査を行ってもらう必要があります。
- 張出し足場
建築物全体に「張出し材」と呼ばれる部材を取り付け、その上に足場を組んでいきます。
屋根・外壁塗装工事を行う建築物に隣接する建築物等とのあいだにある隙間が狭いなどの理由で、どうしても地面に足場を設置することができない場合に用いられます。
足場を設置するスペースを十分に確保することが難しい場合でも足場を設置することができるメリットがある一方、足場の構造自体が複雑で設置の際は綿密な計算が必要になる、非常にデリケートな足場のため足場の組み立て時と使用時の作業は細心の注意を払う必要があるなどのデメリットがあります。
- 脚立足場
DIY 等でも活躍している脚立に踏み板を組み合わせた足場です。
建築物に沿って脚立を横一列に並べ、隣り合う脚立同士の上から踏み板を渡してゴムバンド等でしっかりと固定して使用します。
手軽に組み立てられる簡易的な足場ですので、作業時の安全性を確保するのが難しく、脚立の高さによっては屋根等の高所部分の作業ができないといったデメリットがあります。
しかし、組み立て・解体作業がとても簡単であるため、外壁の部分的な補修等を行う際にはたいへん重宝にされています。
足場仮設代の相場と費用算出に係わる足場面積の出し方

屋根・外壁塗装工事を依頼する際、もっとも気になるのが足場の仮設にかかる費用ではないでしょうか。
日本の平均的な戸建て住宅(約 30 坪 / 2 階建て住宅)の場合、屋根・外壁塗装工事でかかる足場代の相場は 1m2あたり 600 円~800 円、飛散防止のメッシュシートの相場は 1m2 あたり 100 円~200 円、そこへ人件費等を加算すると平均 15 万円~20 万円ほどになります。
しかし、この相場金額はあくまで目安であり、3 階以上の多層階や住宅の形状など、条件によって相場金額よりも足場仮設代が高くなるケースもあります。
屋根・外壁塗装工事における足場仮設代をより正確に算出するためには、住宅の外周や高さなどをもとに施主様ご自身で計算する必要があります。
足場仮設代の計算方法
足場仮設代をより正確に算出するためには、足場面積と足場費用の 2 つを計算する必要があります。
- 足場面積の計算方法
足場面積とは、足場を組み立てて設置するための面積のことです。
四季彩ホームでは足場面積の算出する際、「足場面積=(家の外周+6m)×家の高さ」にて算出しています。
計算式にある「6m」とは、足場をお家の外周ピッタリに設置することができないため、少し離れたところに足場を設置しています。
なお、屋根の点検・メンテナンス等の工事を行う場合、屋根の後輩によって屋根足場を追加する場合がございます。
その場合、正確な足場仮設代の算出が難しくなりますので、外壁塗装工事と共に屋根工事の依頼をご検討中の施主様は 1 度ご相談ください。
- 足場費用の計算方法
算出した足場面積をもとに具体的な足場費用の合計金額を算出します。
「足場仮設代の合計金額=足場費用(足場面積×平米単価)+養生費用(足場面積×養生費用)」この計算式にて具体的な足場仮設代を求めることができます。
◼ 足場費用の算出例
縦 7m×横 9m×高さ 7m の 2 階建て住宅の足場費用を算出する場合を例にご説明します。
まずは、足場の設置位置の情報も必要になります。
今回は、
・足場を住宅から 0.6m 離れた場所に設置する:+0.6m
・足場は建物の両端に 0.6m ずつ余るように設置する:×2
この条件にて足場の外周を求めます。
足場の外周は「縦幅+横幅」で算出可能ですので、「足場の外周=縦幅(7m+0.6m×2)×2 面+横幅(9m+0.6m×2)×2 面」にて足場の外周の長さを求めます。
つぎに足場面積を算出しましょう。
足場面積の計算式は「足場の外周の長さ×足場の高さ」になります。一般的な戸建て住宅における足場の高さは「家の高さ+1m」で設置されます
よって、足場面積は「足場の外周の長さ×足場の高さ(7m+1m)」にて求めることができます。
最後に足場仮設代の合計金額は「足場費用+養生費用」にて算出します。
足場費用は「足場面積×平米単価」にて算出します。
一般的な平米単価は 700 円~800 円が相場となっていますが、ここでは足場の平米単価を 800 円とします。
よって、足場費用の算出方法は「足場面積×800 円」にて求めることが可能です。
養生費用は「足場面積×養生費用相場」にて算出します。
さいたま市における養生費用の相場は 1m2 あたり 200 円ほどですので、計算方法は「足場面積×200 円」にて求めることができます。
これらの計算方法による算出結果をもとに「足場代の合計金額=足場費用+養生費用」を求めることができます。
なお、ご自宅の大きさは平面図または立法図にて確認することができます。
「足場仮設代 無料」は危険?
屋根・外壁塗装工事費用全体の約 20%を占めている足場仮設代を無料にすると言われた経験はありませんか。
人は誰でも「無料」という言葉を聞くと、自然とお得なイメージを思い浮かべてしまいがちですが、
屋根・外壁塗装工事において「足場仮設代 無料」は、まずあり得ません。
塗装業者によって異なりますが、平均的な家の足場面積が 200m2ほどであるさいたま市の場合、一般的な足場仮設代の単価は 1m2 あたり 600 円~800 円ほどで設定していることが多く、そこに部材の運搬費や組み立て作業を行う人件費などを加算すると足場仮設代の平均価格相場は 12 万円~16 万円ほどとなります。
非常に高額な足場仮設代を「無料」にすることは、塗装業者にとって大きな痛手となるにも関わらず、なぜ足場仮設代を「無料」にすることができるのでしょうか。
足場仮設代を無料と謳っている塗装業者の多くは、足場の組立てに必要な費用を他の料金に上乗せしているケースが多く、足場仮設代を 0 円にする代わりにそのほかの費用に少しずつ上乗せしていることがほとんどです。
そのため、見積もり書をよく確認すると各項目の単価が他の塗装業者と比べて高くなっていることが分かります。
とくに塗装面積 1m2 あたりの単価が 1,000 円以上の場合は足場仮設代等が上乗せされている可能性が高いため要注意です。
また、「自社で足場を組み立てるため仮設代を安くすることができる」と宣伝している塗装業者もありますが、足場を組み立てや解体等を行う場合、労働安全衛生法に定められた足場の組立て等作業主任者のもとで行われなければなりません。
資格を取得していないのに足場の組み立てや解体等を行ってしまうと、適切な足場を仮設することができず、思わぬトラブルに巻き込まれるリスクが高くなります。
火災保険による足場仮設代の節約が可能です。

足場仮設代は屋根・外壁塗装工事費用全体の約 20%を占めます。
そのため、少しでも足場仮設代を節約したいとお考えの施主様ご家族も少なくありません。
四季彩ホームがご提案している足場仮設代は平均的な相場と大きく外れた価格ではありませんが、台風やゲリラ豪雨などの自然災害による住宅被害がみられる場合、火災保険を使って足場代を 0 円にするご提案をさせていただいております。
詳しくは弊社の記事火災保険を活用して足場代をゼロにをご参照ください。